清宮幸太郎の前の高校通算本塁打数1位、山本大貴がプロに行かなかった理由とは?
2022年現在、高校通算本塁打数の歴代最多記録は、日本ハムファイターズに所属している清宮幸太郎選手の111本です。
彼は高校3年間の間にこれだけのホームランを積み重ね、鳴り物入りでプロ入りしましたが、清宮選手の前の記録保持者は誰かご存知でしょうか?
それは、神港学園出身の山本大貴さんという人で、高校通算107本塁打を放っていました。
2021年時点で、高校通算で100本以上打ったのはこの2人のみです。
そんな山本さんの記録を塗り替えた清宮選手は、ドラフト会議で7球団指名による競合の末、日ハムに移籍しましたが、山本さんはどうだったのでしょうか?
清宮選手が登場するまでは、高校3年間で100本以上ホームランを打った唯一の打者だった山本さん。
清宮選手のように争奪戦になりそうな感じもしますが…。
高校通算本塁打数
高校通算本塁打数という記録は、公式戦で記録されたものを計上していると考えている人が多いかもしれません。
しかし、実は練習試合で打ったホームランも数に含まれています。
そのため練習試合の数が多くなると、それに比例して記録も出しやすくなります。
一方で、メジャーリーグでも活躍した松井秀喜選手は、高校通算本塁打数が60本。
そして松井選手といえば、星稜高校時代の5打席連続敬遠が有名でしょう。
彼のようにすごい打者となると、そもそも勝負をしてもらえず、ホームランを打つ機会も減りやすくなります。
また、練習試合で放った本塁打の数も含むということで、練習試合を行う環境も加味する必要があります。
高校野球の練習試合というのは、基本的にそれぞれの学校のグラウンドで行われることが多いですが、そのグラウンドの大きさは千差万別。
練習試合を行うグラウンドの環境も、高校通算本塁打数に影響を与えると言えるでしょう。
ちなみに、甲子園球場はホームから両翼までの距離が95mで、本塁からセンターまでの距離が118mです。
一方で、山本さんが在籍していた神港学園のグラウンドは、両翼85m、センターまでが95mです。
そして山本さん以外にも、高校通算本塁打数4位で94本放った伊藤諒介さん、同じく7位で85本放った横川駿さんも神港学園です。
このことからも、神港学園のグラウンドはホームランが出やすかったのかもしれません。
高校通算本塁打数はあくまで参考記録、という見方もできそうです。
プロへの道
山本大貴さんは、甲子園には1度も出場していません。
当然、甲子園での通算本塁打数は0本ですが、高校通算で107本ものホームランを放った選手が、プロの世界で活躍する姿というのも期待したいところです。
高校時代、山本さんのスイングスピードは158km/hをマークしていました。
高校生のスイングスピードの平均速度が120km/h、プロの平均が140km/hということから考えると、その素質の高さがうかがえます。
ちなみに、あのイチロー選手のスイングスピードも158km/hでした。
スイングスピードや高校時代の実績を考えれば、プロ入りしていてもおかしくなさそうな山本さんでしたが、プロ志望届を出すこともなく社会人野球のJR西日本に進みました。
その理由として、「プロでやっていく自信がなかった」と本人は語ります。
「通用するイメージが湧かなかった。打撃には自信があったけど守備は苦手だった。未練もない。プロでクビになって仕事がなくなるよりは、社会人に行けるなら行こうと。」
「母親はずっと働きずくめだったし、卒業したらできるだけ迷惑をかけたくないと思っていた」
ちなみに先ほどご紹介した、伊藤諒介さんと横川駿さんもプロの世界に進むことはありませんでした。
その後山本さんは、JR西日本の野球部に4年間在籍。主に指名打者として出場し、全国大会の舞台にも立ちましたが、社会人通算本塁打数は5〜6本ほど。
高校野球は金属バットを主に使いますが、社会人野球は木製バットを使用することになります。
プロでも金属から木製に変化したことへの対応に苦労する選手が多い中、山本さんも木製への対応には苦労したようです。
そして2016年に引退し、その後は駅にあるみどりの窓口などで、駅員業務に勤めています。
まとめ
山本大貴さんは、清宮選手が早稲田実業時代に高校通算本塁打数が107本なった際、「早く僕の記録を抜いてください」とコメントしています。
記録を持つことは名誉ですが、それと同時に記録保持者としての重圧もあったのかもしれません。
また、高校通算でたくさんホームランを打てていれば、必ずしも活躍できるというわけではありません。
それもまた、プロ野球界の厳しさと言えるでしょう。
一方で小笠原道大選手のように、高校通算0本塁打でありながら、プロの世界で300本以上ホームランを打つ選手もいます。
練習試合でのホームランも記録として計上される高校通算本塁打数ですが、あくまでも参考記録の1つとして考えるのが良いのかもしれません。
プロ野球の世界で成功すれば、社会的な名誉やたくさんのお金が得られます。
ならば野球の才能がある人は、プロの世界に進むのが良いと思うのが一般的な考え方かもしれません。
しかし、野球の才能があるからと言って、プロの世界に進むのが全てではないでしょう。
山本さんは高校通算107本塁打の記録を持ちながら、プロには行きませんでしたが、JR西日本で勤務している時の写真に写る笑顔からは、結果的に良い選択ができて幸せな人生を歩めていることが分かります。
一方で清宮選手は、2022年がプロ5年目となりますが、前年は一軍出場ゼロに終わりました。
崖っぷちに立たされた、かつての超高校級スラッガーの覚醒に期待したいですね。
そして、いつか清宮選手の記録をも抜く選手が現れることにも期待してみたいと思います。